「体幹トレーニング」は本当に必要?
一段落したとはいえ、世の中まだまだ体幹トレーニングブームと言っても差し支えはないでしょう。当CLUB100でも、「体幹トレーニングをやってみたいんです!」「体幹トレーニングで痩せたいんです!!」という声がここ数年で急増しました。
皆さんの中にも、ただ漠然と「体幹トレーニングって体に良さそう!」と思っている方が多いのではないでしょうか!? でも、ちょっと待ってください。そもそも体幹トレーニングとは何か、もっと言えば、そもそも体幹とはどこを指しているのか、皆さんご存知でしょうか??
私たちはよく「胴体部分を支えるトイレットペーパーの芯のようなもの」と表現するのですが、一般的に、肋骨と骨盤の間にあって、内臓を覆っている「腹横筋」や「腹斜筋」等のインナーマッスルを総称して「体幹」と呼んでいます。この部分を鍛えて安定させることで、姿勢が改善されたり、お腹が引っ込んだり、競技パフォーマンスが上がったり、怪我の予防になったり・・・といった様々な恩恵が受けられることから、近年大きな注目を集めるようになりました。それらの筋肉は、インナーマッスルという名の通り、体の深層部に存在するため、通常のいわゆる腹筋運動では鍛えることができず、特殊なエクササイズを行う必要があります。いわゆる腹筋運動で鍛えられるのは、腹直筋という表層の筋肉で、体幹トレーニングの効果は残念ながら得ることができないのです。そのためもあってか、書店には多くの体幹トレーニング本が並び、雑誌などでも多く特集が組まれるようになりました。それは非常に喜ばしいことに間違いはないのですが、運動未経験者や運動初心者が、いきなり体幹トレーニングから始めるのには、少し疑問を呈しておきたいところです。
運動を始めるにあたって最も優先順位が高い事柄は、基礎体力の維持・向上です。そのためには、まずは下半身の筋肉を鍛えることが最重要事項です。加齢とともに上半身の筋肉量はほとんど変化しないのに対し、下半身の筋肉量は、1年で1%という速さでどんどん減っていってしまうため、スクワットなどの適切な筋力トレーニングを行い、その減少を食い止めなければならないからです。下半身の筋肉量が減っていけば、体力が衰えて疲れやすくなるなどの症状が出てくるだけでなく、転倒しやすくなったり、基礎代謝量が下がることで太りやすくなったりもします。ということは、ダイエット目的の場合も、下半身の筋肉量を増やして基礎代謝量を上げ、脂肪の燃えやすい体を作ることが最優先と言えます。と同時に、有酸素運動も取り入れて、積極的に脂肪を燃やしていく必要もあります。有酸素運動は、痩せるためだけでなく、高血圧や糖尿病など様々な成人病の予防・改善といった観点からも極めて重要です。
運動の入り口として体幹トレーニングに興味を持つというのは、非常に喜ばしいことです。しかし人それぞれのフィジカルの状態、運動の目的によって、必要なトレーニングの優先順位は異なるということを知っておいて損はありません。体幹トレーニングよりもスクワットのほうが急務なケースは、実際の現場において非常に多く見受けられます!
では、体幹トレーニングはどんな場合に有効なのでしょうか?! 冒頭で、「トイレットペーパーの芯」と表現しましたが、胴体部分に分厚くて固いトイレットペーパーの芯が備わっていれば、ジャンプをして着地をした時に芯が潰れないので、体勢を崩したり転んだりする心配はありません。逆に、芯がふやけていたら、着地をした時にグニャッと潰れてしまい、体勢が崩れたり転倒したりする可能性が生じます。つまり、体の安定性を高めることで、怪我の防止や競技パフォーマンスの向上を図ることができるのです。また、ぶれがなくなることでラクに効率良く走れるようにもなります。
もちろんスポーツ以外にも効果は発揮します。ここまでトイレットペーパーの芯と表現してきましたが、別の言い方をすれば「胴体部分を締め付けるコルセット」とも表現できます。つまり、ぽっこり出てしまうお腹をぎゅっと締め付けて押え込んだり、腰がラクになったりといった効果が期待できるのです。
体幹トレーニングは非常に有益なトレーニングです。ですが、それだけで効果を発揮するというよりは、下半身や上半身のトレーニング、有酸素運動などと、目的や体の状態によって上手く組み合わせて行うことでより大きな効果を得ることができるといった類のものです。まずはご自身にとってどんなトレーニングが必要か、その見極めをすることが大切です。